地域で取り組むSDGs経営と効果的な情報発信
[評価認証]

自発的自治体レビュー
(Voluntary Local Review: VLR)の実施

愛知県豊田市

取り組みの概要

 豊田市は、自治体SDGsモニタリング研究会の発足(2020年5月)当初からメンバーとして参加し、主に地方自治体の視点からツールの開発に貢献してきました。研究会メンバーで指標の設定や各ゴールとの関係性について議論を重ね、国連機関、企業、自治体がそれぞれの立場から経験や知見を共有した成果として、「自治体SDGsモニタリングの手引き」Part A 及びPart Bとして、SDGs達成度とガバナンスの評価手法を公表しました。この結果を踏まえ、豊田市では、「自治体SDGsモニタリング手引き」に基づいて実施された最初のVLRを2022年6月に発行し、国連経済社会局(UN DESA)へ報告しました。
 豊田市のVLRの特徴は、「SDGs未来都市計画」で定めている優先的なゴールとターゲット及び各施策の進捗管理の方法を生かしながら、前述のモニタリングツールの「SDGs達成度評価」とガバナンス指標に基づくレビューを行ったという点にあります。それぞれ異なる視点の指標で進捗を確認し、レビューすることで総合的にモニタリングすることを目指しました。

  • 豊田市自発的自治体レビュー表紙 豊田市自発的
    自治体レビュー表紙

取り組みの経緯や課題の背景

 2030アジェンダが国連サミットにて採択されて以降、豊田市にとって、「持続可能な開発」という理念は都市政策の基礎の一部をなしています。2018年に内閣府から「SDGs未来都市」に選定されてからは、SDGsの普及啓発に力を入れるとともに、SDGsを合言葉に民間企業や団体とより強く連携し、地域課題の解決を進め、持続可能な都市の実現を目指ています。
 こうした取り組みを進める中で、豊田市としてどのように2030アジェンダへ貢献することができるのか、そして持続可能な都市への発展のために、どのような戦略を立てるべきかを明らかにすることが重要と考え、自治体レベルが作成する「自発的自治体レビュー(VLR)」作成に着手しました。

活用したツール

 VLR作成にあたっては、「自治体SDGsモニタリング手引き」Part A 及びPart Bに基づく2つの手法を採用しました。1つは、ローカライズされたアウトカム指標によってモニタリング可能な「SDGs達成度評価」(Part A)です。2030アジェンダのうち、地域レベルで対応可能かつオープンデータから数値が入手可能なターゲットについて指標を絞り込み、その数的根拠によりSDGsの達成状況を把握しました。評価の結果は、ゴールごとに達成度0%から100%で表すことができるため、自治体の強みと弱みを明確に把握することができます。
 もう一つは、自治体におけるSDGs推進体制の観点からのガバナンス指標によるレビュー(Part B)です。地域レベルでのSDGs達成のためには行政だけの取組では不十分であり、民間企業や市民を巻き込んだ体制づくりが大切です。加えて、行政のイニシアティブ、行政内部の組織体制、そしてその推進を支えるための制度的、財政的、技術的など様々な環境整備が事業成果(アウトプット)を左右します。こうした要素を指標として整理して現状を把握できるのがSDGsガバナンス指標です。
 これら2つの側面に加え、総合計画や未来都市計画に掲載される事業のアウトプットを進捗管理し、計画をローリングすることにより、総合的なモニタリングが可能となりました。
 また、VLR全体の構成と内容については、国連経済社会局(UN DESA)の“Global Guiding Elements for Voluntary Local Reviews (VLRs) of SDG implementation”を参照し、そのすべての要素を取り入れました。

効果

 VLRプロセスを通じて、改めて豊田市がこれまで歩んできた道のりと、現在注力している施策、SDGsの取り組み姿勢と達成状況、今後の目指す姿を、具体的な事例を位置づけながら、体系的に整理することができました。
 VLRはSDGsをローカライズさせ、その進捗をグローバルに把握する上で極めて有効です。そして、都市の学びや経験を共有することにより、自らの取り組みを国際的にアピールすること、また自治体間の学びを促進することが可能です。このような活動は、結果として2030アジェンダの前進へとつながります。
 VLRが国連経済社会局(UN DESA)に報告された翌月の2022年7月、ニューヨークにある国連本部で開催された国連ハイレベル政治フォーラムに豊田市長が招待され、特別イベント「第5回地方・地域自治体フォーラム」及び「VNRラボ 第12会合」にて、豊田氏が公表したVLRについて発表しました。そのほか、複数の国際イベントへの招待を受けるようになり、VLRを通じて、国際的なコミュニケーションを積極的に行っています。

  • 2022年7月 国連ハイレベル政治フォーラムで発表する豊田市長 2022年7月 国連ハイレベル政治フォーラムで発表する豊田市長

展開可能性

 自治体SDGsモニタリング研究会の活動、「自治体SDGsモニタリングの手引き」の発行、そしてVLRの実施という流れに並行して、豊田市では、市内の経済の自立的好循環の創出を目指し、SDGs達成に貢献する民間企業を認証する制度の構築を行ってきました。2023年4月より実際に運用が開始したこの認証制度の設計には、国際連合地域開発センター(UNCRD)の監修のもと、自治体SDGsモニタリング研究会の活動が大きく生かされています。
 また、豊田市のVLRでは、地方自治体にとって最も包括的な基礎となる行政計画である総合計画とSDGsとの関係性についても触れています。そして、次のステップとして、次期総合計画に策定にあたり、よりSDGs達成を意識した持続可能なまちづくりのビジョンを描く必要性を述べています。自治体の総合計画にとって2030アジェンダは、その方向性を持続可能な社会の実現へと導く道しるべのようなものです。将来のあるべき姿を定め、目標に向かって何をするのか、VLRは都市の成長戦略の在り方にも示唆を与えてくれます。
 一方で、国内の他の自治体に目を向けると、日本においてはまだVLR実施の実績が少ないのが現状です。国連経済社会局(UN DESA)が注目し、また少しずつ世界的に盛り上がりを見せているこのVLR実施のムーブメントが、日本においても広がり、地域レベルの取り組みが加速することを期待しています。

取り組み関係主体

実施主体:豊田市
協  力:国際連合地域開発センター(UNCRD) 自治体SDGsモニタリング研究会
とよたSDGsパートナー