会長あいさつ

 このたび,「中部圏SDGs広域プラットフォーム」の会長を拝命いたしました柳谷啓子でございます。地域に根ざした持続可能な社会の実現を目指し,設立以来,熱意ある先達の皆様とともに歩んできた本プラットフォームの舵取りを担うこととなり,身の引き締まる思いでおります。
 2020年12月の設立以降,本プラットフォームは中部圏,さらには我が国全体におけるSDGsの実現を支援するとともに,国際社会への貢献も視野に入れ,多様なステークホルダーとの連携を重ねてまいりました。その根底には,「国際連合地域開発センター(UNCRD)」「一般社団法人中部SDGs推進センター」「中部ESD拠点」「ローマクラブ日本」など,多彩な知見と実践のネットワークが息づいております。
 私たちは今,2030年のSDGs達成期限まで残すところ5年という重要な節目に立っておりますが,その達成状況は厳しいものです。「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」(SDSN)の報告によれば,169のターゲットのうち,2030年までに達成可能とされるのはわずか16%にすぎません。残る84%は停滞または後退しており,日本のSDGs達成度も世界18位(2024年時点)と比較的高水準にある一方で,ジェンダー平等,気候変動,資源循環,生物多様性においては深刻な課題が残されています。
 加えて,中部圏における自治体レベルの達成度も,UNCRDを中心とする「自治体SDGsモニタリング研究会」が日本全国の地方自治体の 2015 年から 2022 年までの SDGs 達成度を評価・分析した報告書によれば,飢餓(目標2),ジェンダー平等(目標5),不平等是正(目標10),責任ある消費と生産(目標12),気候変動対策(目標13)において低調であるとの指摘があり,地域課題と地球的課題の接点に真摯に向き合う必要性を痛感しております。
 こうした背景を受け,外務省は2024年に「国際社会の持続可能性に関する有識者懇談会」を立ち上げ,ポストSDGsに向けた今後の方向性を公表しました。その中で強調されたのは,一人ひとりのウェルビーイングの向上,日本発の持続可能な成長モデルの提示,ルール形成の国際的主導,循環型バリューチェーンの再構築,グローバル・サウスとの連携強化,科学技術外交の推進,そして全ての前提としての平和の確保という難題を含む,多面的な戦略的取り組みです。
 私たち中部圏SDGs広域プラットフォームは,これらの論点を踏まえ,持続可能性を単なる理念にとどめず,地域からの実践と発信を重ねてまいります。2024年度に開催された第5回「中部圏SDGsフェスティバル」では,SDGs未来都市を擁するこの地域ならではの多様な知見と連携事例が結集し,「共創」の価値を再確認する機会となりました。2025年度以降は,ポストSDGsの新たな道筋を切り拓くべく,文化・科学・政策の力を統合し,地域から国際社会への接続点としての中部圏の可能性を高めてまいります。
 次世代を担う若者や多様な主体とともに,「誰一人取り残さない」未来社会の構築に向けて,引き続き行動と対話を重ねてまいります。皆様の温かいご理解とご支援を心よりお願い申し上げます。

  • 中部圏SDGs広域プラットフォーム
    会長 柳谷 啓子
    (中部ESD拠点代表,中部大学副学長)