地域で取り組むSDGs経営と効果的な情報発信
[モニタリング]

中華人民共和国徳清県における
SDGsローカルモニタリングのための
パイロットプロジェクト

中国国家地質情報センター

概要

 本パイロットプロジェクトでは、中国の徳清県(中国浙江省湖州市)を対象地域として、「地域社会ではどのようにSDGsを実施できるのか、どのような変革アクションが可能なのか」という観点から、国主導で地域レベルにおけるSDGsのモニタリング・アプローチを開発しました。国連のグローバルな指標フレームワークとの整合性をとりながら、地域の状況に合わせてローカライズし、102の指標を選定、収集した統計データを地理空間データと統合し、SDGs の進捗度を分析しました。さらに分析結果を活用して、「持続可能な開発のための2030アジェンダ/SDGs実施に関する徳清進捗報告書」にまとめて、プロジェクト成果として、発表しました。

  • Fig1 SDGsローカルモニタリングのためのパイロットプロジェクト概要図 Fig1 SDGsローカルモニタリングのためのパイロットプロジェクト概要図

取り組みの経緯や課題の背景

 国連による国と地域の両レベルにおけるSDGsの進捗のフォローアップとレビューの呼びかけに対して、中国はミレニアム開発目標(MDGs)の経験から、国レベルで指標にもとづいたSDGsの進捗を測定・モニタリングする重要性だけでなく、地域レベルでSDGsのモニタリングの必要性も認識していました。ただ、国連で採択されたグローバル指標フレームワーク(2023年3月現在231の指標)を、地域レベルでのモニタリングにそのまま使用するには限界があり、いかに適切な指標を選択して信頼できるデータを入手するのか、また、多くの指標と関連するターゲットには地理的背景があるため、それらをいかに効果的に統合し可視化するのかが最大の課題でした。

課題解決のために活用したツール

 地域の状況に合わせるべく、SDGsモニタリングのアプローチを独自に開発しました。1)地域の状況に応じて適応性・包括性・測定可能性の3つの観点からローカライズ2)多種類のデータを取得・処理3)地理的な枠組みで102の指標を選定4)3つの階層レベルで17のSDGsすべてを評価5)結果を文書化して普及6)3ヵ年行動計画に移行、という6つのステップを経て実施されました。さらに収集した統計データを地理空間データと統合して可視化しました。SDGs の進捗度の分析・評価については、各指標を国際・国内基準で比較するだけでなく、関連する主要ターゲットをグループ化し、定量的・定性的の両面で分析・評価、さらに、指標の貢献度や関連性に応じてクラスター分析を実施しました。

効果

 本プロジェクトの成果は「持続可能な開発のための2030アジェンダ実施に関する徳清進捗報告書」にまとめられ、同県はSDGsの8つのゴールを実現したが、6つのゴールで改善が必要で、残りの2つのゴールで課題を抱えていると報告されました。さらに報告書は「徳清3年行動計画(2020年~2022年)」の策定に活用されており、地域開発政策に関するガイダンスを提供しました。具体的には、産業排出量の削減、エネルギーや物質消費の削減、公共交通の利便性の向上等、SDGsの達成に向けた課題に対して、詳細な実行戦略の策定とそれに応じた資源配分の要求が行われました。また、モニタリングの役割を認識し、SDGs実施実績について定期的なモニタリングと報告を行うことが決議されました。

展開可能性

 「持続可能な開発のための2030アジェンダ実施に関する徳清進捗報告書」にはモニタリング手法の方法論が詳しく紹介されており、インターネットを利用した「中国(徳清)SDGsナレッジポータル(www.deqing-sdgs.cn)」も開設されており、徳清県での経験と教訓を中国国内のより多くの都市で本プロジェクトを展開することが可能となっています。

  • Fig 2 中国(徳清)SDGsナレッジポータル Fig 2 中国(徳清)SDGsナレッジポータル

取り組み関係主体

 本パイロットプロジェクトは中国国家地質情報センターや中国天然資源省、中国国家統計局ら国主導で実施されたが、地元浙江省政府、徳清県政府も全面的に協力して行われた。
事業主体:中国国家地質情報センター
パートナー:中国天然資源省、中国国家統計局、浙江省政府、徳清県政府、専門家グループ等